なごんのエンタメ

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映画『レイジング・ブル』感想。ラストの音楽が沁みる

 

レイジング・ブル』は最高の映画。大好きです。

二回目の視聴となりました。

ノンフィクションものの、ボクシング映画です。


この映画に出てくるジェイク・ラモッタは最低な野郎だし、見ていて怖い。まったく尊敬できません。

だけど、ものすごく魅力を感じてしまうんです。
いい映画はホント、どうしようもないやつを魅力的に感じさせます。

主人公が、本当にいい。

異常に嫉妬深くて、暴力的で、覚せい剤でもやってんのかってくらい疑心暗鬼。

でも、『レイジング・ブル』は、そんなラモッタを、めちゃくちゃ魅力的に描いています。

 

 

ちょっとしたシーンでも、ちょっとした会話でも、ラモッタがちゃんと描けているんです。

たとえば、ラモッタと弟のジョーイが、プールサイドで会話をします。

ラモッタはきれいな女性を見て、いいなと思う。その女性のことで、弟のジョーイと話します。

ジョーイ「やけにご執心だな 簡単には寝ないぜ」
ラモッタ「おれに気安い言い方はするな お前の仲間とは違う 時々 頭に来るぞ」
ジョーイ「とにかくすぐセックスはムリだ 手間ひまかけなきゃ」
ラモッタ「寝たのか?」
ジョーイ「いや」
ラモッタ「正直に言え」
ジョーイ「正直に言ったぜ くどく聞くな ウソついたってバレるだろ デートはしたがね」

ラモッタは弟が相手でもこんな感じ。

疑心暗鬼。とにかく嫉妬深い。

妻が対戦相手のボクサーについて、いい男だから倒せば人気がでるよ、と言います。

するとラモッタ、激怒。なんで褒めるんだと。俺というものがありながら……。

その晩、「セックスのときにほかの男について考えたか」と聞いてきます。

ラモッタ「ベッドのなかで アレしてる時さ」

妻「ないわ」
ラモッタ「なぜジェニロをほめた いい男と言ったろ」

妻「ろくに見たこともないわ」

ラモッタ「じゃあなぜ褒めた」

 

としつこい。こんな野郎です。

でも魅力を感じてしまう。

 

ラモッタに特に魅力を感じるのは、八百長の試合でとった、彼の行動のせいもあるかもしれません。

 

また愚かさに、愛しさを感じるせいかな。

違うかな。

この嫉妬深さを、とても人間的だな、動物的だなと思い、親近感がわくのか。

こんなシーンもあります。

弟のジョーイが出前を取るために、ラモッタとラモッタの妻に、何を食べる? と訊くシーン。たったそれだけのシーンですが……。

ジョーイ「君は何だ?」
妻「ケーキをひとつ」
ジョーイ「ただのケーキか チーズバーガーぐらい食え その方が体に」
妻「じゃ そうするわ」
ラモッタ「やけに素直だな」
妻「食べたいの」
ラモッタ「命令される事はない」
ジョーイ「勧めただけさ」
ラモッタ「あれは強制だ」
ジョーイ「彼女が何を食おうと俺は構わん」

 そんなことにもこんな風に怒るんです。

「こんな野郎に魅力なんて感じるか」と思うでしょうが、レイジング・ブル』を見れば、絶対にこんなラモッタを好きになってしまうと思います。

ボクシングの天才、ラモッタは、こんな野郎なのに、かっこいいんですよね。

 

主演はロバート・デ・ニーロ

監督はマーチン・スコセッシ

 

ロバート・デ・ニーロは、彼のボクサー時代とその後を表現するために、前者を鍛え上げた体で、後者をだぶだぶのだらしない肉体で表現しています。

演じるために、躰をそこまで変えたってだけですごいなあと思います。

 

監督のマーチン・スコセッシロバート・デ・ニーロとよくコンビを組んでいてタクシードライバーや喜劇作品『キング・オブ・コメディ』という映画も二人で作っています。

 

この映画の最後には、歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲が流れます。

これが沁みるんです……。