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法廷もの好き必見! おすすめ法廷映画5作を語る!

 

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法廷映画が大好き!

西洋の法廷には、王宮みたいな雰囲気があって、見ただけで「ああ、いいなあ」と感じてしまいます。

また法廷もののなかには、多くの傑作ミステリが眠っています

今回は、そんな傑作法廷映画を5作紹介し、感想を語ります。
ネタバレを書く場合には、白い文字で表記しますので、安心して読み進めてください。


①情婦

難しさ:☆
面白さ:☆☆☆☆☆

色あせることのない、法廷映画の名作。

原作は、アガサ・クリスティの短編『検察側の証人』。

クリスティが原作! ってだけで、もう面白そうじゃないですか。

展開も演技も見事な大傑作。


ストーリー

舞台はロンドン。
お金持ちの未亡人が刺殺されます。
容疑者のレナード(タイロン・パワー)は、一流弁護士ローバーツ卿(チャールズ・ロートン)に弁護を頼みます。

ですが、彼のアリバイを主張する妻(マレーネ・ディートリッヒ)が、とんでもない証言をします……。

白黒映画で、序盤は「面白いのかな、これ」って思ってましたが、すぐ引き込まれ、最後に思わずうなり声をあげた一作です。


感想

法廷映画の傑作。
白黒ですが、いまも燦然と輝いています。

何といっても、怒涛のラストが見所ですね。伏線も張られています。全然関係ないと思ってた人物や証言が、ラストになると意味を持ちます。

「ああ! おまえ、この事件にそんな風に関係あったのか!」

とハッとなりますし、事件の真相にも度肝を抜かれました。

実はこの映画の模倣じゃないですが、似た展開を持った作品が現在多くあります。私はその作品をいくつか見ており、そのうえでこれを見ました。

ですが、この『情婦』が一番楽しめましたし、度肝を抜かれました。
どんな人も、真相の衝撃にのけぞるでしょう。

 

監督・脚本はビリー・ワイルダー
コメディもミステリーも撮ってるマルチに活躍した監督です。マリリン・モンロー主演『お熱いのがお好き』も撮っています。

注目の役者は何といっても、容疑者の妻を演じたマレーネ・ディートリッヒ

この人はかわいらしい顔ってよりも、きつい感じなので、そんなにタイプじゃないんです。でも、すごく好きなんですよね。

癖のある女を演じさせたら、最高な女優です。

がっかりな点もあります。序盤のシーン。弁護士が片眼鏡で太陽光を反射させ、相手にまぶしい思いをさせて、その反応で嘘をついてるか確かめる? みたいなことをするんです。
そのシーンはいらなかったんじゃないか、と思います。

相手が嘘をついてるかどうか見極めるシーンが、論理的じゃない。

ことばのやり取りをして、嘘か本当かを見極めるならいいですが、光りを反射させてその反応で……、っていうのは、長年の経験があったとしても、どうなのかなと思いました。

ですがその程度で、妻の嫌な女っぷりも、物語の展開も、大満足の傑作法廷映画です。

十二人の怒れる男

難しさ:☆
面白さ:☆☆☆☆☆


ストーリー

アメリカの陪審員裁判の映画。

少年が殺人を犯したかどうか、12人の陪審員が話し合います。11人が有罪に投票しますが、8番陪審員ヘンリー・フォンダ)だけは無罪に投票。

以降、激論が戦わされます。

8番陪審員は、探偵のように、ひとつひとつを検証していきます。陪審員というよりも、ヘンリー・フォンダ演じる「探偵」ですね。
ほかの陪審員たちはだんたん、無罪に心が傾きますが……。

矢継ぎ早の推理で、有罪の根拠となっている、論理の弱さを突く!

密室劇の傑作!


スタッフ

脚本を担当したのはレジナルド・ローズ。彼のオリジナルです。

ローズは、実際に殺人事件の陪審員を務め、それが発端となり本作を書いたそうです。

監督はシドニー・ルメット
シドニー・ルメットはこれがデビュー作です。
この作品で、ベルリン国際映画祭金熊賞受賞しました。

汚職とたたかう警官を描いた『セルピコ』、次に紹介する名作『評決』も、シドニー・ルメットが演出。
社会派サスペンスを多く発表した名監督です。


感想

殺人事件で誰もが有罪を疑わないなか、その根拠の薄弱な部分を、どんどん突いていきます。
それが面白く、爽快ですらありますね。

それに、純粋にかっこいいですよね。
有罪を無罪にひっくり返そうとするわけですから。

またこの作品の魅力は、「矢継ぎ早の推理で、有罪を無罪に……」ってだけじゃないんです。

12人の陪審員、それぞれがとてもよく描かれているんですよ。この映画を見て10年近くたっています。
ですが、いまだに一人一人の顔と性格を思い出せます。

映画を見ても、つまらないとキャラクターも、ストーリーもすぐ忘れます。
でもこの『十二人の怒れる男』では、どのキャラクターも非常に印象に残っているんです。

 

ずっと同じ部屋で話し合っている密室劇だから、こじんまりしてるんじゃないか、って意見もあるかもしれません。

ですが全くそんなことないんです。
確かにずっと一つの部屋にいます。
いますが、役者たちはただ座ってるだけじゃないんですよ。ただじっとしてるだけじゃない。いい動きをして、小ぢんまりさを全く感じさせないんです。

この映画の、個人的なよくない点を挙げれば、二つあります。
序盤、ヘンリー・フォンダ演じる8番陪審員が、凶器の飛び出しナイフについての議論中、あることをします。

その行動が乱暴じゃないかな、と。
ここにちょっと違和感を感じてしまったんです。突き立てなくても……、と。

また最後、できればあの頑固者のじいさんを、もっと論理的な方法で……と思いました。
メガネの男は推理で倒したので、全員を推理という武器で倒してほしかったな、なんて思いました。

『情婦』も素晴らしい。
マレーネ・ディートリッヒが最高。

ですがシドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』も、最高の法廷映画です。

③評決

難しさ:☆☆☆
面白さ:☆☆☆☆☆

 

静かな雰囲気をたたえた傑作。
法廷映画は、『十二人の怒れる男』のように、喧々囂々の議論があり、にぎやかなものが多い。
だがこの映画は静か。最も静かな法廷映画ではないかと思います。

アルカトラズからの脱出』のような落ち着いた雰囲気をたたえた傑作。


ストーリー

初老のギャルビン弁護士(ポール・ニューマン)は、アルコール中毒です。ですがそんな落ちぶれたギャビン弁護士のところに、医療ミスを証明する裁判の依頼が舞い込みます。

ですが、相手の弁護士は手ごわく、一筋縄ではいきません。

ギャルビン弁護士は、立ち直るためにも、必死になりますが、ある女性弁護士(シャーロット・ランプリング)に出会い……。


スタッフ

監督は『十二人の怒れる男』と同じシドニー・ルメット

主演はポール・ニューマンです。
1925年生まれ。2008年に亡くなった、誰もに知られる名優です。

アカデミー賞に何度もノミネートされ、レーサーとしても活躍しました。
実在する強盗たちを描いた、著名な『明日に向かって撃て!』では、ブッチ・キャシディを演じました。

この『評決』は、ポール・ニューマンにとって、とても重要な役柄になりました。それまでポールは、青い目のいい男というイメージでした。
ですがこの『評決』で、シルバーな荒廃した雰囲気の男を、見事演じました。
ポール・ニューマンの転換期に、非常に重要な作品となりました。


感想

前述しましたが、静かな雰囲気の映画です。
法廷映画に、静かな雰囲気をたたえた作品は少ないのではないでしょうか。

ストーリーはもちろん、面白いのですが、たたえる雰囲気が本当にいい。

法廷ものの多くが、ラストでは「衝撃の真実が明らかに!」とか、「裁判に見事勝利! やった!」という感じだと思います。

ですがこの『評決』のラストは、そんな感じではありません。
にぎやかさは全くないんです。
とても静かなラストです。

裁判の模様はもちろん、ポール・ニューマン演じる弁護士と、女性弁護士との関係も興味深いですね。

裁判だけじゃなく、人間ドラマも非常に面白い見事な法廷映画です。

 

 

④真実の行方

難しさ:☆
面白さ:☆☆☆☆☆


ストーリー

大司教が、めった刺しにされるシーンから始まります。現場から逃げた血まみれの男・19歳のアーロン(エドワード・ノートン)は、すぐ逮捕されます。
弁護士のマーティン・ベイル(リチャード・ギア)は彼の弁護を引き受け、元カノの検事・ジャネットと戦うことになります。

ですが、大司教や、検事局の大物たちの秘密が、次々に明らかになり……。

構成が見事で、次々明らかになっていく真実に、ぐいぐい引き込まれます。ちょっと見始めたら、つい一気に最後まで見てしまうほどの、リーダビリティを持った作品です


スタッフ

構成が見事なんですよね。
ポンポンポン、とテンポよく運んで、ぐぐぐっと引き込まれてしまいます。
次々秘密が明らかになって事件が起こり、「これぞエンタメ!」って感じです。

すーぐ引き込まれてしまう!

誰が話を作ったのかと思ったら、原作があるんです。
ウィリアム・ディールの小説が原作です。
この作家のことは全然知らなかったんですが、アマゾンで調べると、そこそこ日本でも出版されてるみたいです。

レビューを見ると、かなり高評価なので、ちょっと読んでみようかなと思います。

シャーキーズ・マシーンという小説も、映画化されている模様です。

 

監督はグレゴリー・ホブリット。
グレゴリー・ホブリットは主にサスペンスを撮っている監督です。

主演は超有名なリチャード・ギアです。
リチャード・ギアが出てる作品だと、個人的には『クロッシング』が好きですね。

リチャード・ギアは、熱心なチベット仏教徒だと知ってますか? また現在はハリウッドから通報状態にあるとか。

中国はアメリカに次ぐ映画市場で、ハリウッドは中国と仲良くしたいようなんです。ですが人道主義者で、熱心なチベット仏教徒(ラマ教徒)であるリチャードは、中国のチベット抑圧を非難してるんです。

2010年のインドの仏教イベントでも、中国を非難しました。

そのため中国といい関係を築きたいハリウッドから干されていて、アカデミー賞授賞式には出禁、大作への出演も困難らしいです。

ですが2018年4月24日には、33歳年下のスペイン人女性と、3度目の結婚をするなど、私生活は充実しているみたいです。

また『ファイト・クラブ』で著名となる、エドワード・ノートンも出演、彼のデビュー作です。
エドワード・ノートンは、お父さんが連邦首席検察官で、おじいちゃんが建築家という名門に生まれました。イェール大学を卒業し、ニューヨークで演劇活動を本格始動させます。

この作品がデビュー作とは思えないほど、「うわっ! やられたっ!」という演技をしています。


感想

展開のさせ方が見事ですよね。
いわゆる法廷ものなので、意外な犯人というか、ラストシーンにばかり注目が集まってしまいます。

ラストシーンももちろんいいんですが、一気に私たちを引き込み、タン、タン、タンと展開させるスピード感、そういうものがホント最高ですね。

どんな悩みごとがあるときでも、これを見ると夢中になって、忘れてしまうんじゃないでしょうか。それくらいのリーダビリティを持っています。

 

また演技がね、いいですね(笑)。

映画の楽しみ方はそれぞれで、ストーリーを見ているんであって、演技は下手じゃなくていい、って人も多いと思います。
演技に感動した! って経験はほとんどない、って人も多いんじゃないでしょうか。

でも『真実の行方』のエドワード・ノートンの演技には、うわあ、役者ってすげえなあと思ってしまうと思います。

 

以下、ネタバレなので、白地にして書きます。見たい人のみ、読んでみてください。

この映画のラストには確かに驚いたんですが、ちょっとおかしいとも思いました。
だってそうじゃないですか?

エドワード・ノートン演じるアーロンは、二重人格のふりをするほど、頭がいいんですよ。
なのに、なんであんな朝っぱらに、司教をを殺したんでしょう。

あれだけ頭がいいなら、深夜にこっそり殺すとか、もっとやり方があったんじゃないでしょうか。工夫した末、捕まって、二重人格を演じるはいいと思います。

でも、なんであえて、あんなリスキーな方法を取ろうと思ったんでしょうか。

そこがどうしても引っかかるんですよね。
傑作でしたが。

 

ジャスティ

難しさ:☆☆
面白さ:☆☆☆☆

面白さは☆5つはいかないですが、毛色の変わった? とは言いませんが、ほかの法廷映画とは違うので、紹介したいと思います。


ストーリー

熱血若手弁護士のアーサー(アル・パチーノ)が、腐った判事たちに立ち向かうストーリー。

明るい映画とは言えず、どん底で苦しむ人びとが登場し、彼らのためにアーサーは全力で尽くす。

そんななか、判事が事件を犯し、弁護を頼まれるが……

ほとんど孤立無援だが、自分の信念を曲げずに奮闘する、若手弁護士の活躍を描いた作品。


スタッフ

監督はノーマン・ジュイソン
全然知らない監督です。
調べると、ヒューマン・ファンタジーやコメディ、社会映画など、様々なジャンルを撮っている監督です。

主演はアル・パチーノ

彼は超有名ですね。

アル・パチーノは、1940年生まれ。
若いころからずっと映画に出てるので、「あっ、あの青年、アル・パチーノだったのか」「あ、あのおじいさんもアル・パチーノだったっけ」なんて経験を私はします。

貧しい生まれで、教師の勧めで演技高校に入学し、劇場でバイトしながら通ったそうです。
でも17歳で学校は退学、職を転々としながらも、役者の夢をあきらめませんでした。
その後『ナタリーの朝』でデビューし、『ゴッドファーザー』でアカデミー助演男優賞にノミネートされました。

ハリウッドには180センチを超える人たちも多い中、アル・パチーノは166センチなんですよね。
日本では背が高いですが、映画ではすごく小さく見えるんですよね。

この『ジャスティス』でも、ヒロインであるクリスティーン・ラーティより小さいので、なんだか弟のように見えます(笑)

 

感想

いままでの名作4作に比べると、見劣りする部分はあると思います。

ですが面白い作品ですし、ほかの法廷映画が取り上げない、罪を犯したどん底の人々を取り上げていて、なかなかスッとする映画です。

暗い雰囲気は嫌いじゃないのですが、リーダビリティは低いですね。

またなぜ、アル・パチーノ演じるアーサーに弁護を頼んだのか、それが疑問です。

 

どんでん返しとはいきませんが、意外な展開もあり、 気持ちの良いラストではあります。ただ貧困層の苦しみを、もっと踏み込んで描くなどがあれば、もっとよかったのになと感じました。

 

まとめ

いい点、悪い展開てきましたが、以上5作を見ずして、法廷映画は語れないと思います。

特に『情婦』『十二人の怒れる男』『評決』『真実の行方』はめちゃくちゃ面白いので、映画が好きならぜひともチェックしてください。

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